終わった話

経過した事物

2021.03.09

あかるい。風の形がのびやかで綺麗。
夕方の黄金色の空の下では全ての物質にスポットライトが当たる。
iPhoneのカメラを向けるだけで存在の輪郭がまざまざと撮れる。

 

有機物でも無機物でも、自分にとってその存在が信じられる物は内部に生命が透けて見える。
まるで内側から発光しているかのような綺麗さ。それを見たとき、自分が生きていることがうれしくなる。
その綺麗さを感覚器で受容できるうれしさと、その綺麗さの根源が自分とおそろいだということのうれしさ。
あそこで揺れる木々と私は別々の存在でありながらもどこか繋がっている。互いに一方方向に進行する生命活動を以てそこに立っている。

そこに自分が立てていて、そこに相手が立ってくれていることのうれしさが、存在のよろこびだと思う。存在するとさみしいが、存在があるとさみしくない。

 

日が暮れてから世が更けるまでのほんのわずかの間、真黒ではなく深海のような蒼さで星を湛える空がほんとうに綺麗で思わず天を仰いだ。
自分たちめいめいが明滅する有機的なあかりだと信じるのに値する光景。
自分に信仰があるとすれば、存在のことを信じている。我々がわざわざ空間に存在しているということ、そこに意味を見出さない意味はないだろう。