終わった話

経過した事物

2021.02.24

目覚めなかった朝はポッドキャストを聞く。
なるべく他愛のない言葉のやりとりを聞いていると、他愛のない職場の人間関係にもぬるっとなじめるような気がするから。
たとえるなら、公衆浴場の前の掛け湯、あるいはプールの前の消毒液みたいなもの。
あったかいのとつめたいの、はたしてどっちがいいんだろうね。

 

職場の人に薦められたので、毎日30分程度歩くことにした。
終業後にさっそく実践しようとしたが、先に用事を済ませているうちに日が暮れて、夜道を歩いてみるととんでもなくつまらない。
陽の光がないので川面や草木の様子がまったくわからず、光る看板ばかりが目に入る。都会のサラリーマンがやたらに飲み歩く理由が腑に落ちた。夜にしか出歩けなかったら、正の光走性に導かれるほかないだろう。
そう考える自分も通りがかった道で煌々と照らされた「からあげ」の4文字を見つけて、5つ買って帰った。ほらね、こんなことになっちゃうじゃん。これはこれで満更でもないけどさ。
健康になりたかったら朝あるいは日暮れ前に歩いた方がよさそうだ。明日また別の時間を試そう。

 

夕飯を済ませた後にチョコレートを食べながら珈琲を飲んで、坂本龍一を聴きながら短歌の本を読んで、ちょっとだけラムも飲んで健康で文化的で最高だった。

坂本龍一さんの『async』に改めて圧倒された。

当たり前のことかもしれないけど、この人はマジでこの音を欲して求めて生んで重ねているんだ、ということが伝わり、背筋が冷える。いやむしろ脳髄は熱くなる。

この世には希求の苦しみをその人にとっての幸せだとする人もいる。ほんとうのさいわいっていったいなんなんだろうね。