終わった話

経過した事物

2021.01.30

断続的に大雪。

窓の外で舞っている分にはいい眺めだ。

おさまるまで、本を読んで過ごす。

山崎ナオコーラさんの『かわいい夫』を読んだ。

彼女の書くエッセイはさらっとしているが、どれもテーマに対するつよい気持ちはあからさまに出ていておもしろい。

巻末の自己紹介に「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」とあり、納得した。

「カテゴライズせずに人間を見ることはできないのかを日々考えている」ともあり、それにも共感した。


昼ごろ、雪の勢いが弱まったのを見計らって、満を持して美味しい中華屋に天津飯を食べに出かけた。

しかし、残念ながら天津飯はメニューにはなかった。代替案として炒飯を食べる。

そういえば天津飯って中国のどの地域の料理なんだろう。この中華屋のルーツはどこにあるんだろう。

思い出野郎Aチームの増田薫さんの著作『いつか中華屋でチャーハンを』を読んでから、子の食への真摯かつ変態的な向き合い方に影響を受けている。

子に習ってインターネットで調べてみると、中国には天津飯に相当するメニューはなく、日本発祥の料理らしい。そりゃ町中華ならともかく、本格中華を掲げる店のメニューにはないわな!

しかし、ランチの看板メニューの鶏肉とカシューナッツの炒め物はアメリカ発祥の中華料理らしい。

それなら天津飯も置いてよ〜!いやこれは駄々です。本格五目炒飯おいしいです。増田さんの本もおもしろいです。

 

いつか中華屋でチャーハンを

いつか中華屋でチャーハンを

  • 作者:増田 薫
  • 発売日: 2020/12/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

中華屋を出たあと、入ったことのなかった喫茶店で珈琲を飲んだ。

ずっと、外から見える立派なバーカウンターとそこに集う人たちのことが気になっていた。

しかし店内に入ると、カウンター席ではなく奥へ奥へと案内される。

てっきり小さなお店なのかと思っていたが、中はうなぎの寝床のように奥に広がっていて、立派な木製の4人掛けのテーブル席が3つも4つもあって驚いた。

昼時にお邪魔したので、テーブルでは別のお客さんや団体さんがワイワイとランチを食べている。

中越しに聞こえる親しげな話し声になんだか気持ちが落ち着く。近ごろしきりに飲みに行きたいと思っていたのは、要はこういうひそやかな雑踏を求めていたんだよな。

店全体がこなれた質感の木でできている上、くの字に伸びた店の両端にドアがある構造のため、ドアが開いたときの空気のゆれで新たなお客さんが入ってきたことが体感としてわかる。

まるで、店という大きな生物の胃袋の中にいるみたいだな、と思った。珈琲の香りにつられて次々と呑み込まれる我々。静物の中に生物がいるおもしろさ。

カウンターの常連さんの会話を遠くに聴きながら、長居して本を2冊読んだ。

今度来た時はどなたかとお話できるといい。


夜、友人の家に泊まりに行った。

鍋をつくってくれるということだったので、ならば発泡酒でしょと淡麗のロング缶を持参したが、ほんのちょっと飲んだだけでヘロヘロになってしまった。

ヘラヘラしながら、破滅したい、とか、俺はもう終わりだ、とか口走ってしまう。

こりゃあだめだ。あてどもなく喚いていても迷惑なのでスマホのメモ帳におこすと、とんでもなく暗い文章が書き出されてあははとなった。そうかそうだったのか。こいつは参考資料としてとっておきますね。

寝る間際、買い出ししていた材料があったことを思い出して、ふたりで深夜に生クリームを泡立ててカッサータをつくってたのしかった。

きっと一晩経てば冷え固まっているだろう。

明日の朝起きて一番に考えるであろうことがカッサータのことになったのがうれしい。