終わった話

経過した事物

2021.01.23

雲ひとつなく快晴。心置きなく家にいられる。

家で浴びる日の光がいちばん贅沢だと思う。

無職のころは自宅の窓際に座って外の木が風で揺れるのを見てばかりいた。それがそのときいちばん有効な時間の使い方だと思っていた。

社会の中にいるといつのまにか自分のすべてを社会にアップロードしなくてはならないような気持ちになってしまう。

別にそんなことはなく、適宜ローカル環境でやっていればよい。


図書館で借りた本が積み上がっているので、すこしずつ崩す。

片桐はいりさんのエッセイ『もぎりよ今夜も有難う』を読んだ。

『わたしのマトカ』『グァテマラの弟』の二作を読んで、片桐さんの書くエッセイがすっかり好きになってしまった。

徹底して飄々としている人だなと思う。でもその中に繊細な気持ちの機微があってかわいらしい。

エッセイでは舞台や映画で演じる自分ともぎりとして映画に関わる自分が地続きに記されていて、その生活や佇まいを想像して親近感がわく。

次に映画やドラマなどで片桐さんを見たときにはまるで知り合いにあったような気持ちになりそうだ。


はたしてその機会はすぐに来た。

夕方、AmazonPrimeで『勝手にふるえてろ』を観て、メルヘンな衣装を纏った片桐さんの登場シーンにひとり思わず手を振った。

大九明子監督のつくる映画が大好きかもしれない。

とてもじゃないけどまだ成熟した女性とはいえない女性(女の子?)のわがままさや感情の波の激しさが、ポップにゆらぐ映像で観やすく表現されている。

主演の女優さんの演技もすごい。松岡茉優さんしかり、のんさんしかり。とても迫真的で切実で、それでありながら痛々しくなく綺麗で見惚れちゃうんだからさすがだ。

人の見られたもんじゃない部分をさまざまな技術力でエンタメに昇華しているのがすごいなと思う。

みんなこういうものなんだ、とちょっと救われる。

 

調子に乗って立て続けに『ボヘミアン・ラプソディ』を観て、完全に情緒がおかしくなった。いちいち感動して笑いながら涙が出る。サタデーナイトハイフィーバー。

ちょっと落ち着こうと思って、りんごを煮てケーキを焼いた。それなりにいい香り。一晩寝かせて、明日の朝には生地が馴染んでいることだろうと思う。

今晩はケーキと一緒に寝る。起きたら私も肉体と精神が馴染んでいるといい。

f:id:mtdch:20210124093714j:image