終わった話

経過した事物

2021.01.10

案の定、2人とも二日酔いだった。

わたしの方がまだ気分がマシなようだったので先に起きて身支度をし、台所を借りて味噌汁と昨日余らせた刺身の鰹で卵味噌を作った。

お酒を飲んだ翌日に作る朝ごはんはいつもよりしょっぱくなる。

冷蔵庫の冷凍ごはんを拝借して、なんとか舌を通過させて胃に入れた。

友人ものそのそ起き上がり、味噌汁を啜って、甘い、と言う。こいつはなかなか重症だ。


互いに気分が落ち着いてきたので、予定通り一緒に映画を見に行った。

『私をくいとめて』は予想をはるかに超えて素晴らしく、上映中、まだアルコールの残る身体が興奮で火照って軽い脱水症状を起こすほどだった。

主演の「のん」さんの才能あふれる表現力や多彩で豊かな映像表現に、スクリーンに釘付けになった。

橋本愛さんとの数年ぶりの共演シーンは、とあるひとつの映画の枠を超え、お芝居による表現のひとつの時代の潮流を感じさせる凄みがあった。

事前に綿矢りささんの原作小説を読んで把握していたストーリーにも改めて勇気をもらう。

素晴らしい喜劇だった。悲劇に目を当てた喜劇は救いになりうると思った。

上映後、2人揃ってヘロヘロになり、近くのカフェで季節外れのかき氷を食べて火照りを冷ました。

ポツリ、ポツリと感想を共有し、脳の火照りもやがておさまっていく。

素敵な映画体験だった。劇場で見られてよかった。


友人の車で送ってもらい、2週間ぶりに自宅に戻った。

愛しの我が家は思っていたよりも5倍は散らかっており、辟易して乾いた笑いが出た。

思わずパタリとなってしまったが、すこし寝たら立ち上がる気力が湧いてきて、荷解きして洗濯して軽い掃除まですることができた。

水仕事などできちんと手を動かしていると、ここで暮らしていたんだ、あるいはここで暮らしていくんだ、という実感が湧いてくる。

実家住まいが長引いてしまったことで生活にギャップが生じないか心配だったが、おそらく大丈夫そうだ。また、ひとりで暮らしていける。