終わった話

経過した事物

2020.11.18

昼、停滞してきたので、夕方にカットの予約を入れた。

ジブリに出てくるおばあさんみたいなオーナーのいる美容室で髪を切ってもらった。

 

オーナーは、白髪で、74歳で、文学部卒で、大学を卒業したあと理美容の専門学校に入学して、地元に戻ってひとりでお金を借りてひとりで開業されて、その後50年ほど町の同じ場所で店を続けて、一昨年まで地域の美容室の団体の理事長をされていて、みんなに「先生」とよばれている。

カットを担当してくれているのは、身長170cmで、腰まである髪をいつも頭の上でひっつめていて、いつもアイホールいっぱいのアイシャドウがきらめいている通称「ジャンボ」さん。

はじめてお邪魔したときは、道すがら外観が素敵だなと思って散歩の延長でフラっと立ち寄ったのだが、切りそろえてもらう程度のつもりが私の髪質の分析をもとにとんでもなく襟足を刈り上げられて、しかしそれが違和感なくピシッときまるカットの技術で、施術後はこだわりのコーヒーを出されてオーナーと互いのルーツついて小一時間話し込み、最後にはおかわりのお茶まで出されて大応援され、美容室に来たとは思えない充実感で店を出た。

以来、この町にいる限りはこの店に通う、と決めている。

 

オーナーはとてもつよい人だが、気品があって柔らかくて、まさに人生の先生のような存在だなと思う。

お話していると、さまざまに話題が移り変わっていく。が、すっと穏やかに展開していく。

得手に帆を揚げること、流れる水には竿を立てないこと、物事人の二面性が両立する不思議、などなど、コーヒーをいただきながら今日もいろいろなことをお話した。

 

曖昧な態度をとりつづけて前も後ろもワンレングスで伸ばしっぱなしになっていた髪の毛は、段を入れて前も後ろもピョンピョン跳ねる「めんこい」ショートカットになった。

元気にやっちゃいなと背中を押されている気持ち。

 

久しぶりにこの町で、人に会って話をした、という満ち足りた気持ちになった。

いつもそこにあっけらかんといてくれる人がいるということは、尊いことだなと思う。