終わった話

経過した事物

2022.10.02

なんのやる気もしない。

朝起きて珈琲を煎れて、飲みながらぼんやりして、2杯目の珈琲を淹れる頃には、もう夕方になっていた。ぼんやりの間に、十和田市地域交流センター(とわふる)で開催されていた名和晃平氏の『生成する表皮』を観た。展示室には黒い物体ばかりがあり、反射したり、吸収したり、消失したり、生成されたりしていた。キャプションに記載されていた作品の解説が大層難解だったけれども、同行した人としつこくああだりこうだり解釈しているうちに、起きている現象についてはなんとなく理解することができた。起きている現象によって何を語りたいかについては、よくわからなかった。展示室の空間は全面的に異質で、全体的にカッコよかった。

夜、友人から連絡があり、人間関係についての相談を受けた。
正しい道がわからないと嘆く彼女に、別にあなたはそのままでいいんじゃない、正しい道なんて特にないんじゃない、と言ったら、うっかり感謝されてしまった。
これまで、自分が人に発しがちなこういった言説を、私特有のやさしさだと思っていたけれども、ふりかえってみると、ただ自分自身こそがいまいる場所が正しい場所だと信じられずにいるだけだった。
居場所が定らず機を見て互いの深淵を覗き合う私たちのことをたまに、向かい合って存在しているブラックホールみたいだな、と思う。
ブラックホールみたいな友人は他にも何人もいて、それぞれがめいめいに引き合ったり反発したりするカオスによって、私の宇宙は形成されている。