終わった話

経過した事物

2022.02.12

混み合う前の時間を狙って、ショッピングモールに行った。

あらかたの買い物を済ませて、スターバックスでコーヒーを飲みながら、とめどなくぞろぞろと車が入ってくる駐車場をぼんやりみつめて、こわいくらいの満足感に襲われてゾッとした。

車に燃料を補給できて、どうやってつくるのかわからないお洒落な味の飲み物を飲めて、いい感じのものを眺めて回れて、気が向きさえすればどれでも持って帰れて、美味しいものまで蓄えていけるなんて、なんて完全で完璧で完結な素晴らしい施設なんだろう。

金を貯めるために動いていた、あのくだらなかった時間が全て肯定される感覚。

ここに来さえすれば、働いててよかった、と思うもんな。そして、また通貨を得るために働く動機づけにもなる。

なんて完全で完璧で完結なんだろう。ほんとうにおそろしい、と理屈はわかっているが、身体は満足している。

ショッピングモールの通路には町の路上のように通りすがったり行き合ったりする意志が存在しなくて、ここで起こるすべての出来事には自分の意志しか作用していない。

脳が溶けそうな娯楽だな、と思った。自分と向き合っているようで、自分以外の情報で溺死している仮死状態のようだ。

 

思ったよりもへとへとになって帰って、昼食は近所のスーパーの弁当にして、夕食はショッピングモールで買っためずらしい味の鍋スープを使って鍋にした。

自分の「おいしい」の感覚に従って火入れして作るとパッケージの調理例の写真とは全く違うものができあがり、それでもやっぱりおいしくて、得意げになった。