終わった話

経過した事物

2021.02.26

職場では思考の指向をあまり話さないようにする代わりに、趣味の嗜好についてはわりとあけすけに話している。
本日もそんな調子で世間話をしていたら、アメリカ出身の同僚が大学で専攻していた分野が自分の専門分野と近しいことがわかり、当時の研究室の先生の名前を教えてもらって興奮した。
こうやって、会話を通じて互いの一部の交換のようなことが起こるたびに、奇跡だ、という心持ちになる。そしてそれはその人に向き合っていればいるほど頻繁に起こる。そういう瞬間のことが好きだから、なにがあっても人を好きでいることをやめられない。
ともかく、今日のこの交換は意義深いような気がした。興味がある分野の論文を読むためという動機があれば語学もちょっとは頑張れるかもしれないし、英語を扱えるようになればもっとたくさんの人たちと価値を交換できるようになるかもしれない。
手先だけを業務のために動かしながら、肘から上のあたりを密かに興奮させていた。こうやって頭の一部をサボらせてばかりいる。

 

退勤後、電車に乗って1時間ほど揺られて学生時代の友人たちと集合して、中華を食べて酒を買い込んで温泉旅館に素泊まりした。
同じ学科に所属していた仲間のうちの1人がこのたびめでたく修士過程を卒業するので、それにかこつけた集い。
懐かしい顔ぶれに会えたことがうれしくて合流するなりあからさまにはしゃいでいたら、テンションが高すぎると諌められた。
でも、それもまたうれしかった。人と会うこと自体でこんなに楽しい気持ちになれたのはしばらくぶりだったし、それを直接伝えられたのも久しぶりだったから。
近況に変わりがない奴もいれば変わりがある奴もいて、それぞれにそれぞれらしくて、つまりはなんでもいい。そもそもみんないい奴だから。
すべすべしたお湯に浸かって体をゆるめた後、ひとりまたひとりと様子をおかしくしていきながら酒を飲み進めて、限界を迎えた順にめいめいの布団で眠った。パーティはたのしい。