終わった話

経過した事物

2020.12.04

朝に泣いた日の昼過ぎは目の玉が熱い。

眼球にうすく膜が張っているような感じで、周囲が白くぼんやりして見える。

この状態になる頃にはきっかけの出来事なんかは割とどうでもよくなっていて、とにかくなにもかもに悲観的になって絶望している。

汚れたレンズを覗き込んでいるような視界がよりいっそう自分から現実感を奪っているような気がして、やたらに目を擦ってしまう。

ほんの一瞬、視界がクリアになるが、すぐにまた元に戻る。

それを繰り返して午後を過ごしているうちに夕方になり、本日の活動時間が終わる。


退勤後、なかなか読み進められずにいた本をバッグに詰めてスタバに行った。

1ヶ月前の自分のブログにスタバに行ったら寂しくなくなったと書かれていたので、それに従った形だ。

入り口のメニュー看板が赤と緑のクリスマスカラーで彩られていて、まんまと機嫌がよくなる。

デカフェのジンジャーブレッドラテを頼んだ。駅ビルの無印良品の空気みたいな味。

店内には動画編集をしている人や動画配信をしている人がいて、ここには現実を求めに来たのに、わりとインターネットが接続されている。

 

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持ち込んだ本のうち、最果タヒさんの『コンプレックス・プリズム』を読了した。

背幅の薄さと表紙の絵のポップさとは裏腹に、想定以上に濃く鋭く深く、タヒさんの自分自身についての洞察が記されていた。

各節のタイトルで示されたトピックについて、二転三転、翻って裏返って、意思を示したかと思えばその裏にある感情を、またその後ろにある感傷を、向かい側にある(と想定される)意志を語っていく。

こんなに自分について批判的に、かつ肯定的になれるものなのか。

極端に示されていく考え方について、同意できることもあれば同意できないこともあり、それがまた著者と読者の互いの存在の独立性を証明してくれているようで安心する。

 

コンプレックス・プリズム

コンプレックス・プリズム

  • 作者:最果 タヒ
  • 発売日: 2020/03/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 


よい読書体験だった。雑多な中で読んだからなおのことよかった。

コーヒー片手にカフェで読書って、案外やっている人が少ない気がするけれども、逆の逆でポピュラーなんだろうか。

わからないけど、またしたい。